◆◆◆ 根源 ◆◆◆ カテゴリー、アーリー・ジェット・クラスにおいて、無類の強さを誇る機体があった。 カテゴリー、アーリー・ジェット・クラスにおいて、無類の強さを誇るパイロットがいた。 彼こそ、知るひとぞ知る、某大規模傭兵部隊ギルドの長・・・の従兄弟、 ジョージ・B・ロジャー(42歳)である。 実を言うと、このカテゴリー、アーリー・ジェット・クラスというのはあまり人気がないカテゴリーであった。 ドッグファイト・サーカスにおける一番人気は、まさしくレシプロ、プロペラ機であって、 華やかに彩られた旧式のプロペラ機同士が派手な空中戦を繰り広げるショーに比べ、 このアーリー・ジェット・クラスというのはどちらかというと地味なショーであった。 そういうわけで参加パイロットは少なく、参加パイロットの多くはほとんどが趣味的参加であった。 「 無類の強さを誇る 」 というのにはそういう 前提付け があってのことだった。 |
ジョージ様、今度の傭兵ギルド会議の議題についてですが・・・ なぁベティ、私は今忙しいんだ。 飛ぶ前にコンセントレーションを高めなければならないんだから。 それ位、君ほどの優秀な秘書ならば分かるだろう? はい、申し訳ありません。 ですが、会長から次にチョリに送る機体とパイロットは選定出来たのかと催促されておりまして。 あぁ・・また、パパ・ロジャーか・・・フライト前になるといつもこれだ。 きっとねぇパパはボク・・じゃない、私の邪魔をして、 私に勝ちたいからそう言ったにすぎないんだよベティ。 は、そうですか・・・ そうさ、そうだよ。 この前だってさ、テイクオフ寸前に無線で 今期の経常利益を教えろ だなんて言ってきたんだよ? 信じられるかい?離陸寸前でだよ? あれはどうみてもボクの・・私のフライトの邪魔をしているとしか思えないね。 は、そうですか・・・ ハァ〜・・・そうだ!確かデトロイタ(デトロイトのアホンダラ名)の格納庫に最新試作機があったな! あれだ、あれを送ろう! は、しかしあの機体は・・・ なに、大丈夫だってベティ君、チョリの整備士達はなかなかに腕の立つ確かな者達だ。 しかもウチが登録しているパイロットもまぁ私程ではないにしろ、 なかなかに優秀なパイロットばかりだしね、ハッハッハッハッ! ウン、そうだ、そうしよう、ベティ君、悪いがそういうことだから、パパ・ロジャーにはそう伝えておいてくれたまえ。 は、分かりました。 じゃ、ボク・・私は忙しいからね、後は任せるよ。 は、分かりました。 |
軽快なエンジンの咆哮を背に、秘書ベティはその場を後にした。 最近チョリからあがってくるクレームの書類を目にしていた彼女は心の中で毒づいた。 問題の根源はここにあるのよね。 全くこの親子と来たら・・・そんなに飛びたいなら、 ココじゃなくあっちで飛べばいいのよ、あんた達自身で・・・ |
まだしばらくは、彼女が現場からのクレームを聞くことになりそうだった。 |