【 キクメンV作戦 黎明編 】

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◆◆◆ GundamProject ◆◆◆

< プロローグ >

1年戦争末期、MS開発でジオン公国に後れをとった地球連邦も、
ようやくMSを戦場に投入するに至ったが、
人間の適応力、順応力には目覚しいものがあり、
一部の卓越した技量を持つパイロットからは、
より高度な性能を持つMSの登場を要求する声が高まってきた。

とりわけ、宇宙空間における無重力空間戦闘において、
より人間の反射速度に近い機体の姿勢制御、
とりわけ高速反転による方向転換を求める声が高まっていた。

当初これはアンバック(四肢を振り回すことで発生する慣性モーメントを使用)による、
姿勢制御で行っていたが、やはり巨大な質量を持つMSにおいては、
ある種のタイムラグが発生するのは避けられなかった。

そこで、指向性を持たせたバーニアを吹かせることにより、
方向転換にかかる時間的速度を、より人間の反射速度に近づける研究がなされた。

そうした要求のもと開発されたのが、
開発コードRX−78(通称ガンダム)をベースにした機体、
開発コードRX−78:NT−1(通称アレックス)である。



一見して分かるように、その特徴は、肩のバーニアにある。

これにより、姿勢反転(前向きから後ろ向きに移る)にかかる、
レスポンス・タイムは、劇的に向上した。

また、脚部にスラスター形状の噴射バーニアが装備されたことも、
機体の運動能力向上に大きく貢献した。

( 無論これは、ユニットの小型・省略化によって、
内部スペースの確保が可能になった事で実現出来たのである )

1年戦争末期に開発されたこの機体は実際の戦場に投入されることはなかったが、
この機体で得られたデータはこの後に開発される機体に多大な影響を与え、
事実この後に開発・生産されたMSにこの技術がフィードバックされていった。

その代表的な例として、RGM−79C(通称ジムカスタム)があった。



この機体は少量生産され、一部の熟練パイロットに与えられ、
局地的ながら実戦投入された機体である。

実際の戦果はまずまずのものであったが、
この機体が投入されたのは1年戦争後のジオン残存勢力の制圧においてであり、
敵残存部隊側はまともな機体とベテラン・パイロットの存在はあるはずもなく、
レベルが拮抗した戦闘は実質なかったといってもよい。

それでも、パイロットからは好評であり、通常のジム・タイプと比較して、
高性能であったことは明らかな事実であった。

1年戦争後、社会財政は軍事費から経済復興処理へと回され、
地球連邦政府によるMS開発は縮小されていくことになるが、
その代わり、MS開発は民間企業へと引き継がれていくことになった。

< 本題 >

ここから冒頭のタイトルにある、GP計画の本題へと突入する。

GPとはもちろんガンダム・プロジェクトのことであるが、
戦争も終わり、他に競合する企業が事実上存在していないため、
ことさらプロジェクト名を秘匿隠匿する必要性がなく、
また、企業イメージを高めるために使用された計画名である。

もちろん開発研究を行ったのは当時の巨大コングロマリットの、
アナハイム・エレクトロニクスである。

GP計画の目指すところは次世代の高性能MSであり、
フラッグシップとしての役割が強いガンダム・タイプの機体を、
開発することは企業としての強大さをアピールすることでもあった。

事実同社のCEOでもある、メラニー・ヒュー・カーバインのこのプロジェクトに、
かける意気込みは相当のものであったと、当時の役員達は口々に当時を述懐する。

このプロジェクトで研究開発された機体は3機であり、
それぞれの機体で研究意図は異なっていた。

そのため、部門は3つに分かれ、それぞれが独自に研究調査を行った。

ただし、3部門が完全に独立孤立していては、
技術的フィードバックが阻害されてしまうため、
機体を統率するメインコンピュータ、及びそのOSソフトは、
一つに統一されたものを使用した。

この、基本的なOSを統一することにより、
異なる3機種の機体データが容易に比較分析判断することが出来、
より汎用性の高い自己学習型コンピュータの開発をも同時に行うことが出来た。

これにより、同社はハードウェアとしての技術的資産を得るのみならず、
ソフトウェアとしての技術的資産をも得られることになった。

もしもそれぞれ異なるOSを組み込んでいた場合、
それぞれの部門でハードウェアのみの開発だけにとどまらず、
OS開発というソフトウェアの開発も同時に行わなければならず、
それは開発コスト、開発納期がかさむことになるし、
また、実験結果収集も3機でそれぞれ異なるフォーマットでのデータ収集になり、
それそれの機体の相対的な判断分析と性能比較が困難なものになっていたであろう。

確かにそのハードウェアに、より適した、より特化した、
OSを用意することは、そのハードウェアの性能を効率的に引き出せることを可能とするが、
それでは開発及び生産ラインが多極化されてしまうことになり、
戦時下においては結果としてインフラで敗北したと言ってもよいジオンの敗北を、
繰り返すことになってしまう。

結果として、1年戦争でこのことを強く印象付けられた経営陣、
及びプロジェクトマネージャー達は、分化した開発は採択しなかったのである。

また、いくら順調に成長過程にある企業とはいえ、
さすがに開発に投じられる費用には限度があったというのも正直な理由であった。

こういう経緯から、このプロジェクトにおける3機の機体の特徴として、
頭部モジュールが全機種で同一ということになった。





さて、全ての機体において統一されていたのはヘッド・モジュールだけではなく、
専用携行武器においても統一されていた。



もちろん研究開発された携行武器は、
ガンダムというフラッグシップ的な機体の開発の名に恥じることのないように、
実体弾使用のものではなく最先端技術であるところのビーム兵器であることは言うまでもない。

携行武器を統一させた理由はもちろん上述した理由(とりわけコスト削減)によるものだが、
武器の使用、及びその制御は、直接的にはマニュピレータが行うものではあるが、
実際に統率するのは火器管制システムであり、それはすなわちOSが行うのである。

OSが統一されたものであるため、使用火器も統一した物を用いることにしたのである。

結果的に、GPにおける部門は、3機種の開発部門に加え、
ヘッド・パーツ開発部門(メインはOS開発)と、
携行武器開発部門が存在した。

それでは各機体の説明を行おう。

最初の機体は、重力下における運用をメインにした機体である。

( もちろん宇宙空間でも運用は出来る )

この機体はGP−01と名づけられた。



この機体の特徴は機体の軽量化によるレスポンス向上である。

ただし、軽量化によって機体強度が損なわれないように、
装甲素材、及び、構造設計においても研究を行っている。

さて、無重力と違い、重力下における機動性能においては、
脚部が重要な役割を果たす。

つまりバーニアによる噴射ではなく、
各関節の能動的な運動力がよりいっそう重要になってくるのである。

これは人間でいうところの、後ろを向くために体を捻じる、
走り出すために手足を振り動かす、といった基本的な運動である。

そこで機体の反応速度を上げるためには、
全体的な重量軽減と、各部関節にあたる部分の駆動力が重要視された。

もう少し具体的に書くと、
操縦者が操縦スティックを引いてから反応するまでの、
レスポンス速度を高めるための条件として、
・ 全体的な重量軽減
・ 各関節に使用されているモーターの反応速度向上
・ モーターのトルクアップ
である。

しかし上述したが、反応速度の向上のために機体を軽量化し、
それに伴い装甲強度が犠牲になってしまっては意味がないので、
この相反する難題にアナハイム・エレクトロニクスの、
開発技術者達はかなり苦心することになる。

結果として、初代ガンダムと言われるRX−78に比べて、
外観的なフォルムはスリムな機体になった。

しかし、対弾性能に関しては、スペック上ではRX−78と同等であり、
運動性能においてはかなりの向上が見られた。

これを現実のものとしたのは、極論すると、各部品の小型化と、省略化である。

初代のRX−78においては、実験的色合いが強く、
なおかつ、どこまでの機能をどれだけ詰め込めば良いのかといったことが、
全て手探りの状況であったため、考えられうる状況を詰め込めるだけ詰め込んで、
あらゆる状況、あらゆる環境を想定した設計の元、開発された機体であった。

ところが実戦で蓄積され、フィードバックされたデータによると、
意外にオミット出来るパーツ、ユニット、OS上の命令機能が多数存在していたのである。

研究開発者達は上記のことを充分理解し、無駄な部分を削ぎ落としていった結果、
軽量化と装甲強化という二律背反をクリア出来たのである。

ただ、矛と楯の問題は永遠に解決されない問題であるのも確かで、
ここまでの装甲強度をもってしても、もしも仮想敵がビーム兵器を用いた場合、
さすがの最新合金精製技術による絶対的地位もゆらぐのであった。

この点に関してはペンディングとなった。

( もちろん予算的な問題が多分に含まれていたのはいうまでもない )

このような経緯をもって生み出されたこの最新鋭の機体は、
初代のRX−78の性能を多いに上回ることに成功し、
関係者各位を一様に納得させるに耐えうる機体となった。

企業力としての力を見せ付けたといえば確かにそうだが、
実際は1年戦争で得たさまざまなデータ( 及び技術者 )を、
1部独占的に接収出来たことが多くの成功要因であることは間違いないであろう。

では次の機体の説明に移ろう。

2機目の機体は無重力下における運動性能向上を目的とした機体である。

この機体はGP−02と名づけられた。



この機体の外観的特徴は、極端なまでに各部に配置されている、
バーニア、及びブースターポッドにある。

とりわけ背中に背負った2基のブースターポッドが目を引く。

また、プロローグで述べたRX−78:NT−1から応用発展した、
肩のバーニア形状も2号機のシルエットを特徴付けるものとした。

これ以外にも脚部スラスター、足底のバーニア、
機体のいたるどころに設けられたバーニアにより、
素人目にもこの機体が機動性を重視したものであるということが容易に判断出来た。

宇宙空間においては地上とは違い、巨大な質量のものを、
瞬時に動かすために必要なエネルギーを各部関節のモーターの力によって、
地面という物質を介して相対的な作用反作用の力として得ることは出来ない。

そのため、バーニア噴射によるみずから生み出す推進力を用いるか、
アンバック(手足を振り動かすことによって生まれる慣性モーメント)によって、
初めて運動することが出来る。

宇宙空間は無重力であるから、ちょっとの力でも大きな質量の物を自在に瞬時に動かせるというのは、
慣性の法則という物理学をまだ学んでいない子供か、それを知らない人の考えである。

繰り返すが例え無重力であってしても質量50トンを超える金属の固まりを、
瞬時に動かすには地面という媒体がない分、かなりの自発的推進力が必要なのである。

結果として宇宙空間で自在に方向転換を可能にするために、
2号機のシルエットはかなり仰々しい物となった。

この仰々しいとも言える機能により、
当初に打ち立てたスペックを満たすことには成功したが、
制約もかなり存在した。

まず1つに機体の行動時間である。

地上においてはジャンプなどで、バーニアを吹かす以外は、
熱核エンジンによりモーターを運転させる電気エネルギーを、
発生させれば取り敢えず機体を動かせたが、
宇宙空間においては、背部ブースターポッドのスラスター・ノズル、及びメインノズル、
胸部バーニア、肩部バーニア、脚部バーニア、足底のバーニア、
上記以外の各部バーニアを吹かすための固体燃料の搭載量が行動時間を制限することになった。

第2の制約は人間が耐えられるGの限界である。

静止状態からの方向転換はまだ耐えられるが、
音速を超える速度からの急激な方向転換は、
機体限界を超えるはるか以前に人間の体の方が持たないのである。

事実、運動テストにおいて、パイロットの方が気絶し、
緊急遠隔操作で機体をコントロールしたこともしばしばあった。

(ちなみに意識不明の重体者を出したため、
一時期パイロット達の間では未亡人製造機と呼ばれたこともあった。)

このようにピーキー過ぎる性能を持った機体であったため、
一部リミッター機能を搭載して運用したこともあった。

しかしこの実験により得られたデータは、
宇宙空間での機体開発におけるノウハウとして、
かなり貴重で価値あるものであった。

機体研究開発者達は、機体の性能限界の前に、
人間の限界という事を考慮しなければならないことを学んだのである。

書くまでもなく、ミノフスキー粒子によって、
戦場下では遠隔操作(有線ならばある程度は可能)や無人操作は不可能なので、
無人パイロットによるMSの運用は出来ない。

余談ではあるが、戦時中、遺伝子操作を施された、
強化人間と呼ばれる兵士の研究が行われたという戦後調査結果があったが、
これは明らかに戦争倫理規定条約に反する行為である。

さて、2号機の説明の最後に、
驚愕に値するそのスペックデータを記して終えることにしよう。

制止状態からマッハ3まで加速するのに要する時間−38秒
50キロ区間を通過するために要した時間−113秒
(この時の最大重力加速度約5G)

最後の3機目の機体の説明に移ろう。

3機目の機体も2号機と同様、無重力下における運動性能向上を目的とした機体である。

しかし、2号機と違って、一部モジュールを取り外すことで、
重力下でも運用可能である。

もちろん開発コードはGP−03である。



上述したようにこの機体も無重力空間での機動性向上の実験機であったが、
2号機と違うところはアンバック・システムによる、より自然なカタチでの機動性、
(どちらかといえば運動性能向上と書いた方がより的確である)
の向上を研究した点にある。

巨大なバーニア、及び身体各部に配置されたバーニアよる強制的な方向転換と違い、
腰部に設けられたテールバインダー(しかし大型バーニアが搭載されている)を、
アンバックとして用いることにより、より自然で、
かつ、パイロットに過度の負担を与えないターンを行うことに成功した。

このテールバインダーが3号機の外観的特徴を表わしていて、
関係者達からは通称 「 燕尾服 」 と呼ばれた。



ともあれ、この機体はパイロット達からは好評で、
(とりわけ2号機がピーキーすぎる機体であったこともあるが)
宇宙空間で自在に 「 飛翔 」 することが出来た。

ただ、メカニック達からは一部不平不満の声も合った。

ドック船のデッキ内という限られた空間内部では、
このテールバインダーが実にやっかいで邪魔な存在であった。

テールバインダーがワイヤーに引っかかり、
それに巻き込まれて重傷を負ったメカニックもいた。

また、テールバインダーを内壁にぶつけて余計な補修まで行わなければならなかった。

さらに、先ほども述べたが、このテールバインダーには、
大型バーニアが搭載されており、そこから噴出されるカーボンガスで、
フィン部分がすすけて汚れてしまうのである。

バーニア噴出時間が長い場合、一部外装パネルが剥げ落ちたり、
炭化したりして、その度にパネルの洗浄、交換作業も必要であった。

このように、メカニック達からは品質保持作業によるコスト高を指摘された。

ただ、重複するが、パイロット達からは相変わらず好評で、
宇宙空間でここまで自在に、自然に、思ったように動かせる機体は、
この機体以外は考えられないとまで誇張された。

ただ、これには微妙なエッセンスがあって、
2号機と3号機のテストパイロットはお互いの機体性能の違いを、
ロードテストするためにしばしばローテーションがかけられており、
パイロットの正直な気持ちとしては、じゃじゃ馬2号機のような機体には、
なるべく乗りたくないという心理が働き、この3号機を強く押していたのである。

もちろん2号機パイロットの意識不明の重体者の存在が、
各パイロット達の深層心理に強く働いたのは言うまでもない。

さて、機能面において、もう少し具体的に説明すると、
この機体の最もすぐれた運動機能の一つに、背面方向転回がある。

これは、敵とすれ違った場合でも常に正面を向いておけるため、
容易に敵の背後をとることが出来るのである。

また、テールバインダーに設けられた大型バーニアは、
前後に噴射できるため、逆噴射による急停止が可能であり、
しかも腰部という、重心位置が比較的バランスのとれた位置に配置されているため、
加減速も不自然ではなかった。

また、2号機で指摘された燃料搭載量限界による行動時間の制限も、
バーニアではなくアンバックを多用することで、燃費節減にもなった。

2号機と3号機による模擬戦闘の結果においてもなかなか良好であったが、
2号機の操縦に慣れたパイロット相手ではなかなか苦戦を強いられたようだ。

結果として2号機の用兵としては一撃離脱戦法を得意とし、
3号機の用兵は汎用性の高いものであるという判断に至った。

< エピローグ >

この、1民間企業によって行われた開発プロジェクトが、
その後の第二世代MSと呼ばれるMS開発において、
極めて有効で貴重なデータを数多く残したことは、
今日、多くの技術関係者達が認める事実であり、
その後、この巨大複合企業はさらなる発展を遂げて行く事になるのである。

ここまでの担当
AP通信 : アーサー・J・ローエン


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