宿敵との激闘開始から数分後・・・ シャンペールはこれまでに乗ってきた機体とは圧倒的にかけ離れた、 エンジンパワーの扱いに困難を極めていた。 スロットルを開ける途端、グォオオー!! 推進力の方が機体のウェイトレシオを軽く上回り、 お尻を押されて機首は上を向く。 対するアンドレアスもその機体の挙動に目を見張っていた。 ええい!この! 思い通りに動け! 動けってば! チャポン!チャプン! 不規則な挙動を立て直そうと、またしてもスロットルを絞るが、 今度は機体内の燃料が、機体内で音を立てて液体移動をしていた。 それは、ヘルメットを被り、耳栓すらしているシャンペールにも聞こえるほどであった。 それにより機体の重心はことごとく変わり、 さらに機体は予測不能、かつ、従来では考えられない動きを見せた。 アンドレアスはその信じられない挙動を捕らえることは出来なく、 アンドレスが放った近距離ミサイルは空しく空を描いた。 アンドレアスはひたすら相手の力量に感嘆すると共に敗北を意識し始めた。 (相手が実はまともに飛ぼうと必死にあがいているだけなのを知らずに・・・) そして、偶然にもシャンペールは、かの「プガチョフ・コブラ」を決め、 アンドレアスのイーグルをオーバーテイクした。 まさしくドンピシャ、絶体絶命のタイミングでアンドレアスの後方を捕らえた。 やられた! なんという絶技!! アンドレアスが絶対的な敗北を感じた刹那、 シャンペールのフランカーはふらふらひらひらと機首を地に向け、 落下していった・・・ さながら力尽きた鶴が空へ落ちていくようだった・・・ 本来ならばこの機体は、 このような状況下でも失速をまぬがれることが出来る機体であったが、 シャンペールは、涙と鼻水とよだれで全く前が見えない状態で、 機体を立て直すどころか、脱出装置を作動させるのが精一杯であった・・・ シャンペールは、脱出前に「ママン!ママン!」と絶叫していたが、 それを知る管制官に多額の口止め料を払ったのは、 セバスチャンだけの秘密である・・・ |