一方、アンドレアスの方は原因不明の困難と立ち向かっていた。 おかしい・・・出力が全然上がらない! ブースト圧が全然あがっていないみたいだ。 このままでは食いつかれる! ここ数週間、アンドレアスにいささか慢心があったと言ってもそれは過言ではない。 実際、地上攻撃隊の援護フライトで彼を脅かす空の脅威はほとんどなかったのだ。 そのため心に油断があったのだろう。 生活の不摂生をして腕を鈍らせるようなことはなかったが、 機体のチェックがその日に限っては万全ではなかったのだ。 ハハハハ! この前の勢いはどうした? シャンペールの機体がアンドレアスの機体をロックオンした。 フォックス・ワン! 短射程ミサイルがアンドレスの機体に向かってまっすぐに飛んでいった。 懸命に回避運動をとりつつ、フレアを撒き散らすアンドレアス。 しかし、なんとか直撃は回避するも、機体右後部に被弾し、 すさまじいまでのフラッターを巻き起こした。 もはやこれまで、と判断しかけた時、 後方のクフィールも激しく燃え上がった。 シャンペールには何が起きたのか理解できなかった。 シャンペールの機体から放たれたミサイルが、 アンドレアスの右後方に被弾したのを確認し、 とどめを刺すべくさらにもう1発のミサイルを撃とうとした時、 機内に警告音が鳴り響いたのだ。 なんだ!? 振りかえるとそこには醜い1機の飛行機がいた。 その機体は A-7E コルセア2 であった。 乗ってるパイロットはというと、いつも空対空ミサイルは積んではいるが、 実際にはドッグファイトはほとんど経験したことはない、 対地攻撃が専門のパイロットであった。 彼自身、まさか本当に撃つことになるとは今日まで思ってもいなかったのだ。 しかし、アンドレアスがいつもと違う状況であることと、 シャンペールがアンドレアスを落とすことに夢中になっていることを見て、 彼、コルセアパイロットは勇気を奮い起こしたのだ。 彼はロックオンしてミサイル発射ボタンを押したものの、 はたして本当にミサイルが飛んで行ってくれるかとても心配であった。 空対地ミサイルや爆弾はきちんと点検して、何度も使用しているが、 この機体で空対空ミサイルを放つのは今日が始めてなのである。 だが、この不安も十数秒でかききえた。 まるでゲームのようにそのまま飛んでいって、 今度はアンドレアスの代わりにフレアを撒き散らして回避行動をとっていた、 シャンペールの機体の右主翼後方に大穴を空けたのだ。 ・・・ シャンペールとアンドレアスは互いに脱出した。 パラシュートで空を下降する姿を互いに見合った。 アンドレアスがさっきまで戦っていた相手をぼんやり眺めていると、 もう一方の相手が何やら大声と手信号で何かをアンドレアスに伝えようとしていた。 「 ワガ ナ ハ シャンペール 、キサマ ト ハ カナラズ ケッチャク ヲ ツケル 」 撃墜されたショックで、最初はさっぱり意味がわからなかったが、 やがてアンドレアスも大声とゼスチャーで、 同じようなことをシャンペールに向かって吼えていたのであった。 ・・・ その夜、コルセアのパイロットは上機嫌でビールジョッキ5杯をあけて極上の眠りについた。 |