北極海でエネルギウムの反応があったらしい。 そんな噂によって北極海は大騒ぎだ この騒ぎ、我等サブマリナーにとっては大問題だ。 空や海上の連中と違い、われわれは、敵に姿、当然「音」もつかませてはいけないのだ。 そこにそのとき存在した証拠を残せない無の存在。それが我等の存在だ。 しかし、この騒ぎによって、海中のあちらこちらにマイクやソナーが設置され、 身動きが取れなくされている。 我々の潜水艦I-105の主機関は原子力である、旧式のディーゼルエンジンの潜水艦と 違い潜行時間は無限といってもかまわない。 しかし、人間の精神力と呼吸する空気はそうはいかない。 音を立てることを禁じられた艦内で抑止された行動と 汗と湿気で汚れた空気は清浄フィルターの限界を超えて 精神的にも肉体的にも耐えられるものではなくなってきている。 だが、厳しい選抜を勝ち抜いた我が艦のサブマリナー達はストレスで おかしくなりそうな状況でも自らを完璧にコントロールしている。 「副長、この駆逐艦をやり過ごしたら、潜望鏡深度まで浮上する。」 規律正しい艦内の伝令は、艦長から副長、そして各部署へ正確かつ迅速に伝達される。 ソナー室から艦周囲に機械音が存在しないとの連絡が入る。 「潜望鏡深度まで浮上!!、潜望鏡上げ!!」 氷塊の合間をぬって潜望鏡だけが海面にあらわれる。 ほんの5秒・・・潜望鏡で360度の視界W確認する。 「4時の方向に機影、航空機、急速潜航、深度150」 副長「急速潜航、深度150!!」 突如現れた対潜哨戒機のおかげで、艦内の空気の入れ替えを行う間もなく、 また海の底に戻っていく これでは、夜まで身動きが取れないな・・・白夜の夜は事実とても短い 「まったく、エネルギウム騒動とは厄介なものだ。」 |