【 アホンダラ達の空 】
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<アホンダラ達の空 : プロローグ>
化石燃料が枯渇しつつあるこの世界において、
人類は、それにとって変わる代替エネルギーを常に模索していた・・・
生活を豊かなものにするはずのテクノロジーは、
より多くのエネルギーを必要とし、
そしてそれは皮肉な事にこの星の環境を破壊していった。
代替エネルギーとしての原子力や自然エネルギーは、
安全性や継続的に得られるエネルギー量等の点で、
化石燃料を凌駕することは出来ずにいた。
エネルギー効率を高めるための内燃機関等の研究もそれほど功を奏してはいなかった。
ところが、そんななか、ついに人類は究極的ともいえるエネルギー源を発見した。
その新たなエネルギー源は、ほんの微少な量で莫大なエネルギーを、
半永久的に、クリーンに、安全に引き出す事が可能であった。
人々はその夢のエネルギー源に狂喜し、新たな時代の幕開けを夢見た。
その夢のエネルギー源、それは 「 エネルギウム 」 と呼ばれた。
だが、しかし・・・
それは一部の人間にとっての悪夢の始まりでもあった・・・
このエネルギウムは極めてレアな物質であった。
世界の極めて限られたごく少数の場所に極めて微量な量だけが存在していたのである。
ただ、エネルギウムは一部存在が認められたその微量な量だけでも、
これまで搾取し続けてきた化石燃料の何倍にも匹敵するため、
人々はその量に落胆することはなかった。
そうではなく、それとは違うことに落胆するのである。
すなわち採取権の争奪である。
エネルギウムを採取し、売買する権利を得るという事は、
これまでにない巨大な富をもたらすものであった。
しかも世界的な経済不振にある状況下では、
それを手に入れる事は何にもまして優先するべき事柄であった。
しかし人道的倫理感をタテマエとする国際世論を前にしては、
大国はあからさまな軍事介入による争奪戦争を起こす事は出来ず、
戦闘はもっぱら局地紛争への、
「 決して大規模には行わない 」 軍事支援という形で、
間接的に介入していった。
何より大国間どうしでは、世界的大戦を行う事による、
あまりにも大きくなるであろう損失のリスクを考慮した結果、
暗黙の了解事項が協定されていたのである。
そのため、戦略的大量破壊兵器は用いられる事はなく、
もっぱら局地的戦術戦闘兵器が用いられる事になったのである。
また、一部重要地域では最新鋭戦闘兵器を投入してみたり、
それほど重要視していない地域では、老朽化した兵器を投入した。
兵器メーカーにしてみれば、
前者は最新鋭兵器の宣伝や実験運用などの目的で使われ、
後者は老朽化した兵器を安く後進国に売り払い利益を得たのである。
まさしく 死の商人 である。
こうして需要と供給が一致した局地戦争が各地で勃発し、
多くの人間にとっての幸福な夢と、
一部の人間にとっての拭い切れない悪夢が始まるのであった・・・
世界観解説
何故 「 エネルギウム 」 か?
当初イシケンと世界設定の構想を練った時、
現実社会を元に仮想した、いわゆる、
「 リアル 」でこれならありそうな設定、というアプローチをとってみた。
しかし、それだと、一時期のソビエト連邦の崩壊のように、
設定自体が現実の社会の流れについていけず、
古めかしくなってしまいそうだというのと、
さらに、
例えば今現在問題になっている、宗教に代表されるような、
イデオロギー対立等をとりあげるとした場合、
仮にフィクションだとしても、
不快に思ったりする人も出るかもしれないと思ったし、
それよりなにより、「 アホンダラ達の空 」 というタイトルにあるように、
もっとオバカでそんなに真剣に難しく考えなくてもいい、
「 トンデモ設定 」 の方がいいんじゃないか?
ということで打ち出した案であります。
さらに書けば、ならべく多くの人が自由に設定や、
ショートストーリーを書いて楽しめるように、
あまり設定を詳しく固めてしまって、
がんじがらめにしたくはなかったのであります。
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