【 アホンダラ達の空(外伝) 】

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◆◆◆ (ドッグファイトサーカス外伝)溶接工の独り言 ◆◆

ガガーン チュイィィィィィィン!!
ガガガガ! ガガガガ!

・・・ったく、イヤーマフを装着しているのに関わらずこの音だ・・・
少しは労働者の健康も考えてくれたって良いじゃネェか?

労働基準法違反だっつーの!

ブツブツ文句を言いながらも、オレは作業の手を休めずにぼやいた・・・
この仕事の工期は間近だ、遅らせる訳には行かない、
何と言ってもこの会社の将来が掛かっている仕事だ・・・

おっと、溶接棒が切れちまった・・えーと・・・あれ? なんだ、
もう1ケース空けちまったのか?
仕方ねえな・・・・

『おお〜い! 誰か溶接棒取って来てくれ〜!!』

大声で叫んでみるが徒労に終わる、
そりゃそうだ、この騒音だ、此処に居る全員が耳を守る為のイヤーマフを使用している、
俺が叫んだ所で誰も気が付いてくれるヤツはいねえ・・・・

(仕方ない、自分で取って来るか)

足元に無造作に転がしてあったエレベーターのスイッチを引っつかむと、
スイッチを入れ下に下りる、下では監督が主任と難しい顔をしながら
図面を見つめていた、無理もない、工程表と実際の作業には10日以上の遅れがあり、
クライアントからは毎日の様に確認の電話が掛かってきている。

「うい〜ッス、おつかれで〜す」
「あ? ああ・ご苦労さん、どうだね、進み具合は?」
「いまン所順調ッス、でもヤッパきついッスね」
「やはり最初のゴタゴタが原因ですかね、主任?」

ゴタゴタと言うのは、この仕事が始まる前に色んな団体から
作業中止の依頼やら脅しやらが入ってきて、作業の着工が遅れたことだ、
しかしなんだ、この仕事がないと俺等はオマンマの食い上げになっちまう・・・
ガキだってまだ小せえし、欲しい物だってある。

騒ぐのはタダかもしんねえが、ちったァ働いている人間のことも考えろってンだ。

さて、そんな事はどうでも良い、俺は溶接棒を取りにきたんだ、
小難しい話は社長達お偉いさん達に任せておけば良い。

「あ、ゲンさん!」

今話していた主任に呼び止められる・・・
歳はオレよりずっと下だが、頭も切れるし何より俺達作業員側に立ってくれる良いヤツだ。

「なんスか?」
「そろそろ一服入れてください、幾ら工期が迫っていると言っても、
作業員の皆が怪我でもしたら大変ですから」
「ハイよ、じゃサイレン鳴らして来てもいいんスね?」
「かまいません、上にも了解とってあります」
「じゃ」

な? 良いヤツだろ? 裏を返せば色んな意味が有るけど、
それでも今一番きついのが俺達だって良くわかってくれている。

オレはそのまま制御室に行き、当直に伝えた・・・

「お〜い、一服のサイレン鳴らしてくれや〜」
「・・・・・」
「主任が良いとよ」
「・・・・・おう・・・」

相変わらず愛想のねえヤツだ・・・・
作業休止のサイレンは直ぐ鳴った、これで30分は休める。

速攻で自販機の前に行き、あま〜いコーヒーとスポーツドリンクを4〜5本買い込み、
クーラーに突っ込んでおく、作業中は暑さで脱水症状になりやすいからな・・・
会社側から作業規定で決められているんだ。

さてと、コーヒーの蓋を開け一気に半分まで飲み干す、疲れた身体にスーっと染み込む・・・・
愛用のジッポに火をつけ、タバコをふかす・・・

残りのコーヒーをチビチビ飲みながらタバコをふかしていると、30分なんてあっという間だ、
さてと、そろそろ仕事に戻るとするか・・・・・

え? 何の仕事してるかって!?
此処は米鶴造船所、俺達は今,昔の駆逐艦「吹雪」のレプリカを造っている。

※作者注・・・・米鶴(まいづる) リアル世界の舞鶴です

ええ? 何だって今頃ってかァ?
其の訳はこうだ、世間様じゃ今、ドッグファイトサーカスってのに浮かれ揚がっちまってる、
その中のゲームの一つで、まァ簡単に言えば、昔の戦艦に魚雷ぶち当てて遊ぶべってなモンで、
大金持ちの酔狂な奴等の考えそうなコッタ。

忙しいにゃ変らんが、おかげでこちとらオマンマの種が出来るってモンだ、文句は言えねェ
さて、サイレンが鳴った、俺の話は此処までだ、なんだったらお前さんも一緒に働くかい?
なんたって人手不足で困ってるんだ、いつでも大歓迎だぜ。

じゃ、マジにこれでな・・・・・オッと、先に資材置き場に行って来なきゃな、溶接棒がいるんだった・・・・・





さて、今回のキットはタミヤの1:700スケール、ウォーターラインシリーズから
旧帝国海軍駆逐艦『吹雪』を御送り致します。

正直言って、このシリーズ、ちゃんと塗装したのはコレが始めて(^^;
製作途中には小さなパーツは飛ばしてしまうし、参りました。
(オミットしようにも出来ないパーツ・・・仕方ないのでランナーを削りだし自作しました)

多少装備品が傾いたりしたままなのはこの際目をつぶってください、
なんせこんな小さいのは作りなれていないモンでして・・・・・・

さて、カラーリングですが、今回はドッグファイトサーカスで使用される艦なので、
『実際の戦闘能力はありませんよ、これはドッグファイト委員会所属の艦艇ですよ〜』

を意味して、艦首・艦尾をオレンジに塗装してあります(またもや俺設定でゴメン)
ついでに高角砲・機銃の先端もオレンジに・・・・・

これは海外のエアガンの銃口はオレンジ、又は赤に・・・・をもじってこうしました
(苦笑)

海面の表現は、プラ板にブルー系統の色を数種類ランダムに塗りわけ、ラップを被せ表現しました。

ストーリーの軸は、この駆逐艦『吹雪』を建造している造船所での一コマです、
溶接工の一人、『ゲンさん』が汗水たらして働いている姿ですが、感じ出ているでしょうか?







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