【 アホンダラ達の空 】

ドッグファイト・サーカス の入り口へ戻る

アホンダラ達の空 の入り口へ戻る



◆◆◆ 《よくある!? 家庭の光景》 ◆◆◆

--- ドッグファイトサーカス外伝 ---

「あなた! なにぼやぼやしてんの? 早く起きて支度してよ!!」

妻の怒鳴り声で目を覚ます、まだ頭がボーとしていて、今が何時なのかはっきりしない・・・

! そうだ、今日は念願のドッグファイトサーカスの観戦日だった!!
やっとの思いで手に入れることの出来たプラチナチケット・・・・
(仕事サボって妻には出張と偽り3日がかりで並んで手に入れた、これを努力と言わずなんと言おうか!?)

しかもスタンド中央前列の超プレミアムチケットだ!
そりゃ値は張ったが、そんなこたあどうでもいい、普段家族サービスが出来なくて
妻にやじられるのがどんなに辛く、娘に泣かれるのがどんなに後ろめたいか・・・・・・

それを一気に挽回するチャンスだ、夫、父、更に漢も上がって一石三丁とはこのコッタ♪

「ああ、御免御免、直ぐに支度するよ♪」

上機嫌で布団から飛び起き、洗面所に小走りで飛んでいくと、娘の洋子が既に身支度を済ませていた。

「おとうさん、おはよう。 またおかあさんにおこられたの?」
「おはよう、そうなんだ、お母さん、おっかないネ」
「だって、おとうさんがわるいんだヨ」
「そっかー あははははは」

・・・・言うな、何処の家庭も幼い子供が居れば朝っぱらからこんなもんだ(そうか?)
兎に角さっさと身支度を済ませる、部屋に戻り普段のスーツとは違う思いっきりラフな格好を決める。

「う〜〜ん、子持ちとは言えまだまだイケるじゃん♪」

全身が写る大きな鏡の前でポーズなんぞを決めてみる、チョッとはしゃぎ過ぎだろうか?
いつの間にか洋子が傍でそんなオレをキョトンと見つめていた。

「おとうさん、そんなかっこうでいくの?」
「なんだよ、このまえ公園に行った時にはこの服でカッコいいって言って居たじゃんか?」
「・・・・・・ おかあさ〜〜〜ん!」

娘が妻を大声で呼びながら居間の方へ駆けて行く、オレはそれに構わず服に合う帽子を選ぶ、
と、其の時、妻が真っ赤な顔をして部屋に飛び込んできた。

「オウ、どうだ? まだまだイケているだろ?」

呑気に妻に語りかけるといきなり平手が飛んできた・・・・・・・・

「いてェ!! なにすんだよ、いきなり!!」
「このスカタン亭主! 今日は一体なんの日なの!!」

「な、・・・なにって、そりゃドッグファイトの・・・」
「この極楽トンボ! 今日は何月何日なのか言って見なさい!!」

オレは今日に赤丸を付けたカレンダーに目をやった・・・・・

「4月5日・・・・・・」
「そうでしょ? じゃあ解るわね?」
「ウン、だから、前から言っていたドッグ・・・・」

”ボカッ!!”

今度は拳固で殴られた・・・・・・・

「言ってェ! グーで殴ったな? グーで!!」
「ナンだったらハイヒールの踵でその腐れドタマに風穴開けてもいいわよ!」

言って置くが普段は至って物静かな妻だ、(そりゃ時々は怒られるが)まあまあ美人だし気も利くし、
子供にも優しく、良い母親と幼稚園でも評判だ、なのに一体?・・・・

「はァ・・・ったくアナタの飛行機好きにも困ったものだわ、今日は何の日だか良く考えて見なさい」
「何って・・・・あっ!!」
「ふう、漸く気が付いたわね、なら其の格好はやめてさっさとスーツに着替えてね?」
「・・・・・・は、ハイ・・・・」
「ビデオの準備は良いの? カメラも用意した?」
「ハイ、そっちはちゃんとしています」
「そう、なら良いわ、さあ、さっさと着替えてご飯食べてね? 洋子ちゃん、おトイレは済んだの?」
「ウン! おかおもあらったし、はもみがいたヨ!」
「えらいわね、もう『1年生』だもんね?」
「うん!!」

そんな妻と娘の会話はそっちのけでぼ〜〜としながら着替えをし直す・・・・・・
ショックで朝飯なんかとても喉を通らない・・・・・

ああ・・・・オレのプラチナチケット・・・・・・・

チケットに印刷されたこのチケットの有効期限は本日限り・・・・・・・
そして今日は大事な娘の小学校の入学式・・・・・すっかり忘れていた・・・・・・

フン! どうせアメリアとジャプンじゃ入学式も新学期の始まるのも違うよ、
でもどうせ海外で開催するならその国の事情に合せてくれても良いじゃネエか!

「アナタ! 急がないと送れちゃうわよ!!」

ブツブツ言いながらビデオと三脚を担ごうとしていると、また妻の声が飛んできた。

「あ、ああ、ゴメン、今行くよ」
「もう、入学式から遅刻するなんて事になったらトラウマになっちゃうわよ」

(なるか! ンなモン位で!!  それよりコッチの方がトラウマ残っちまった)

「何か言った!?」
「い〜〜〜えなんにも、さ、いこーか?洋子ちゃん」
(地獄耳か!?)

「おとうさんかっこわる〜〜い、またおこられた〜 きゃはははは」

『♪いっちね〜〜んせ〜〜に なった〜〜ら〜〜〜・・・・・・・』(明るく弾んだ声でどうぞ)

妻と娘の陽気な歌声とは裏腹に、オレの心は沈んでいた・・・・・・

「ほらァ、おとうさんもいっしょにィ」
「あ、ああ、うん」

「♪いっちねんせーになったーらー」(低音一本調子で唄ってみよう)



入学式の席で、オレは終始涙を流していた、カメラのファインダーが良く見えない・・・・・
やはり隣でビデオを撮っていたオッサン(失敬、お父さん)が汚ねえハンカチを差し出し、

「やはり子供の晴れ姿は良いですねェ、さ、どうぞお使い下さい」

なんて、言っている・・・・・・・・

「いえ、持ってますので」 『低調』にお断りして妻がアイロンをかけたハンカチで思いっきり鼻をかむ・・・・・・・
しまった、音がビデオに入っちまった・・・・

また怒られる事と無駄になったプラチナチケットを考えるとまたもや泣けて来た、
ファイダーの向こうで娘が笑っている、其れが唯一の救いだ・・・・

ふと、呟きが漏れる・・・・

「カワイイよ、オレの大事なチケットちゃん」・・・・あれ? 違うゾ

End★



皆様、御機嫌如何でしょうか? KEIです。

今回のお話はチョッと時期がずれたけど春の風景(!?)を題材にしてみました。

主人公はドッグファイトサーカスが大好きな30代後半のサラリーマン、
普段は仕事が忙しく、家族サービスも侭ならないのですが、努力と根性で手に入れた
ドッグファイトのチケットで家族サービスをしようと画策します。

しかし、そこには大きな落とし穴が! と言った内容ですが如何でした?

この主人公、自分を見ているみたいで一回こっきりにするのはおしいな(苦笑)
今度名前を付けてあげる事にしましょう(マジか?)

さて、もう殆どの地域の小学校では新一年生が誕生した事でしょうが、
この場をお借りしてお祝いの言葉を述べさせて頂きます、
お子様のご入学、おめでとう御座います。



ドッグファイト・サーカス の入り口へ戻る

アホンダラ達の空 の入り口へ戻る